本年度は非一様回転している磁気回転星の定式化を行い、その定式化にしたがって数値計算コードを開発し、その数値計算コードを利用して、非一様回転する磁気星の平衡状態を求めた。非一様回転磁気星の平衡状態の定式化については、Lovelaceら(1986)が基礎方程式を積分することで一つの手法を提示していたが、平衡状態を求めるためには利用しやすいものではなかった。それに対して、本研究では状態方程式がバロトロープの場合、運動方程式が積分できる条件を見出すとともに恒星内部での第一積分を求めることに成功した。Lovelaceらの積分はある曲面上で一定になるというBernoulliの定理の一般化であるので、流束関数に沿って一定であり、恒星全体で一定になるものではない。それに対し、今回見出された第一積分は恒星全体で一定になるというもので、平衡状態を求めるためには極めて容易に扱うことのできる定式化となっている。この新たな定式化を利用して数値計算コードを開発した。非一様回転の回転則は流束関数の任意関数で与えられるので、流束関数への依存性が大きく異なる2つの関数を選び、平衡状態の系列を求めた。その結果、磁場の分布はポロイダル磁場とトロイダル磁場が同程度の大きさで存在し、トロイダル磁場の幾何学的な形状が回転軸の周りのトーラス状であることが見出された。この磁場の形状は、Braithwaite and Spruit (2004)がdynamicalな計算により導いた準平衡状態での磁場構造に極めてよく一致している。このことは、トーラス状のトロイダル磁場とポロイダル磁場の構造がかなり一般的であり、また安定に存在する可能性を示唆したものである。一方、磁気回転星の線形安定性解析の定式化も行った。基礎方程式を線形化し、摂動量をsin(kθ)で展開するという回転星の定式化に倣ったものである。現在この定式化に沿った数値計算コードを開発中である。
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