研究概要 |
強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)に基いて、クォーク多体系、カラーの閉じ込め、クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)等に関する、以下の様な独自性の高い研究を行った。 1.核子などのバリオンの性質と密接に関わる3クォーク・ポテンシャルの詳細で高精度な格子QCD計算を実行し、それが2体のクーロン・ポテンシャルとY型の線形ポテンシャルの和で表される事を明らかにした。この研究は、格子QCDの最もポピュラーな教科書の1つであるH.J.Rotheの"Lattice Gauge Theories"(World Scientific,2005)の第3版に、1節を割いて取り上げられるなど、確立した高水準の研究成果として世界的にも注目されている。 2.強い相互作用の第一原理計算である格子QCDを用いて、ペンタクォーク系、テトラクォーク系などのクォーク多体系における"閉じ込め力"を世界で初めて明らかにし、クォーク多体系に対しても長距離領域ではストリング描像が成り立つことを示した。 3.非等方格子QCDを用いてペンタクォークに関する高精度の研究を行い、境界条件の変化に対する応答から、コンパクトなペンタクォークの共鳴状態が1.75GeV以下には無いことを示した。 4.非等方格子QCDにより、1GeV以下の軽いスカラー中間子が、通常のクォーク・反クォーク系では表せず、テトラクォークで表せることを示した。 5.格子QCDを用いて、世界で初めて3クォーク系におけるグルーオン的な励起エネルギーが1GeV程度と大きいことを示し、クォーク模型の成功と関連づけた。 6.非等方格子QCDを用いてQGP中でもJ/φなどが存在し得ることを示した。 7.格子QCDとシュウィンガー・ダイソン方程式とを組み合わせる非摂動的計算法を提案し、高温・高密度QCDでのクォークの様相を研究した。
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