研究概要 |
これまでに作成した3次元数値相対論的コードを元に,いわゆるadjusted ADM formalismの手法を取り入れたスキームの開発を行ってきた。その中で,束縛方程式を利用して,計量の時間発展方程式を双曲形式に書き換える方法がいくつか提唱され,球対称の問題を球対称のコードを用いて計算する場合には,元の形式よりもよい振る舞いをすることが示されていたが,3次元の問題では,必ずしも有効でない場合が多いことが明らかになった。また,これらの方法を,いわゆる3次元コードに適用して,球対称や軸対称な問題に適用した場合は,比較的うまくいくが,連星中性子星の合体などの対称性がほとんどない,基本的に3次元の問題では,それほど単純でないことも明らかになった。さらに,計量の時間発展を追っていく際に,束縛方程式をあらわには解かないが,なるべく束縛方程式からのずれを小さくしていくという方法についても,確かに束縛方程式を満たす精度は向上するが,それだけでは,星の振動や重力崩壊がより高精度で解けているということではないことも示された。 全体的な傾向としては,時間発展方程式を数学的に見てよりよいと思われる形に変形しようとすると,方程式は一般的に複雑な形になり,数値的な誤差がより大きく入り込んできて,計算精度を悪くするように思われる。したがって,これまでの研究では,基本的には,われわれがこれまでに用いてきた,いわゆるBSSN形式といわれる方法が,安定性や計算精度の点では重要であることが,より明確になってきたと考えられる。ただし,数値計算に使用するグリッドサイズやグリッド間隔により結果は異なってくると思われるので,この点については,来年度の更なる研究が必要である。
|