研究概要 |
CaのアイソトープについてA=40を大きく、超えるA=60-74の原子核に対してRMFT(Relativistic Mean Filed Theory)による核子の密度分布が得られており,これらを標的とした陽子-原子核弾性散乱の観測量の計算を前年度に引き続いて,RIA(Relativistic Impulse Approximation)に基づいて行った.今年度は,前年度の計算に加えて更に,標的原子核中の核子のフェルミ運動の効果(媒質効果)を取り入れた計算を行い,結果を日本物理学会2006年秋季大会(奈良女子大学)において口頭発表した.又,光学ポテンシャルの多重散乱展開による第2項を計算することによって,_多重散乱効果を考慮した計算も行い,その結果については,日本物理学会2007年春季大会(首都大学東京)において口頭発表した.これら一連の研究結果からは,300-400MeVの入射エネルギーによる弾性散乱では,標的原子核中での核子のフェルミ運動や多重散乱効果を考慮しない,最も単純な1回散乱の光学ポテンシャルによる解析で十分であることが結論される.前方でのanalyzing powerの問題も,陽子の入射エネルギーが300-400MeVでは問題にならない.Caアイソトープ標的に対する一連の計算結果は,最終年度には論文としてまとめて発表する予定である. 今年度は特に,研究会で指摘を受けた多重散乱の効果を不安定原子核についても議論出来る様に,光学ポテンシャルの多重散乱展開による第2項を相対論的な枠組みで計算するプログラムを,陽子と中性子の数が著しく異なる標的にも適応出来る様にする事を重点的に行なう事となった. A=60-74に関しては実際に実験が行われる予定の不安定原子核にNiのアイソトープがあり,これらの不安定原子核に対して同様の計算を行い,実験に先立って散乱観測量を提示する予定である.'更にSnや既に行われている0アイソトープA=18-24に関しても,実験の解析が出来るように散乱観測量の計算を行う予定である.
|