研究概要 |
Niのアイソトープ(A=47-82)に対して,RMFT(Relativistic Mean Filed Theory)による核子の密度分布が得られており,これらを標的とした陽子-原子核弾性散乱の観測量の計算を前年度に引き続いて,RIA(Relativistic Impulse Approximation)に基づいて行った。今年度は,多重散乱の効果や媒質の効果についても研究できるように計算プログラムを改良し,入射陽子のエネルギーが300MeV以上であればこれらの効果が十分小さくなることが確認された。この結果は,日本物理学会2007年秋季大会(北海道大学)において口頭発表した。 更に,CaのアイソトープのA=48に対しては,散乱微分断面積と反応断面積の実験値が知られているので,Niに対して行った計算をこれらの実験値から決まる密度と比較することを行った。RMFTから得られる密度分布は,これらの実験値から得られるものとかなり近いものになって居る事が確かめられた。この結果は,日本物理学会2008年年次大会(近畿大学)において口頭発表した。これら2つの結果は現在論文として発表するように準備中である。 質量数の比較的大きな原子核に対しては,RIAによる解析は有効であることがこれまでの一連の研究から確かめられたが,質量数の比較的小さな原子核に対しては,問題があることが指摘された。特に実験が行われた0のアイソトープ等を解析する場合には,CaやNi,Sn,Pbといった質量数の大きい原子核ではあまり問題にならなかった,散乱微分断面積の再現性の問題がおこり,今後は質量数の比較的小さい原子核のアイソトープに対しても,弾性散乱の観測量から中性子密度を決定する信頼できる方法を,RIAに基づいた解析で確立することを目的に研究を進める。
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