研究概要 |
宇宙のモデルとしてファジー空間を議論するためには,動的なファジー空間の理論を構成する必要がある。一般にファジー空間はそれ上の関数の間の代数関係により定義されるが,その代数関係は3階のテンソルにより記述できる。このことを根拠として,動的なファジー空間の理論としてテンソルモデルを提案した。当初、古典解として物理的に意義のある非可換空間の生成を試みたが,存在はしたもののいくつかの理由により不満足なものであった。一方で,大学院学生の笹井氏とともに可換非結合代数に基づくファジー空間の研究を行った。面白いことに,この可換非結合的ファジー空間上の場の理論は非可換空間上の場の理論の持つ病的な性質(確率保存の破れ,紫外赤外混合)を持たないことが分かり,物理的にはむしろ好ましいファジー空間であることが分かった。この結果に刺激され,テンソルモデルが古典解として可換非結合的ファジー空間を持つかどうか調べたところ,物理的に意義のある様々な解(任意次元のファジートーラス,ファジー球面)が実現できることが分かった。これらの解は,Mathematicaによる数値的な方法によったが,任意次元の可換非結合的ファジー平空間として単純なガウス型の解析的解を持つようなテンソルモデルも構成できた。以上のように,テンソルモデルは物理的に意義のある様々な空間を動的に生成しえる宇宙や空間の動的モデルとして面白いものであることが分かった。次に,現在進行中であるが,一般相対論との対応を調べた。方法は,上記の古典解の周りの揺らぎのスペクトルを数値的に調べ,一般相対論と比較するというものである。数値計算では,MathematicaよりもCが圧倒的に速く,Cを主に使って研究している。上記のガウス解周辺の揺らぎの低固有値モード数が,一般相対論の距離の自由度数と一致しているという驚くべき結果が得られている。
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