(1)核物質における一次相転移に伴う混合相の性質とコンパクト星の現象。核物質では"物質の新しい存在形態"として液一気相転移、K中間子凝縮、クォーク非閉じ込め転移など様々な相転移が議論されてきたが、それらの多くは一次相転移である。核物質での相転移は多成分系での一次相転移となり、熱力学的に意味のある状態方程式(EOS)を構成するためには通常のMaxwell構成法では不正確で、より基本的なGibbs条件を満たさなければならない。このような相転移において出現する混合相ではバリオン数密度とともに電荷密度も非一様になり、特徴ある幾何学的な構造をもつ。我々は上記の三つの相転移に対して密度汎関数法のアイデアを用いて数値的に混合相の性質を明らかにした。特に一般的特徴としてクーロン相互作用の遮蔽効果は混合相の構造の力学的不安定性をもたらせること、その結果極端な場合にはMaxwell構成法で得られるEOSと同じになることを示した。この問題はコンパクト星の質量、半径のような全体的性質に関連するとともにそれらの冷却など微視的過程にも大きく影響する。最近これまでの研究のまとめとしてレビュー論文を発表した。(2)クォーク物質の磁性。超強磁場をもつコンパクト星であるマグネターの発見を契機に、内部に存在するであろうクォーク物質の磁性をQCDに基づいて考察することによってコンパクト星の磁場の微視的起源を追求した。大きな成果の一つはこれまでの研究をレビューの形で発表したことである。そこではクォーク物質での強磁性に関する基本的アイデア、カラー超伝導との共存、競合および密度波生成について議論されている。さらに研究を進めて相対論的フェルミ流体理論を活用する枠組みを考え、帯磁率を導出する試みをした。このときクォーク間相互作用として非摂動的な交換されるグルオンの遮蔽効果を考慮し、グルオン伝播子の縦波成分、横波成分に遮蔽効果がどのように効くのか、その帯磁率への効果を調べた。現在論文を準備している。一方、強磁性相では回転対称性が破れ、低エネルギー励起モードとしてスピン波が存在することが予想されるが、この問題に対してスパイラル法を用いて研究している。スピン波の問題は理論的だけでなく、磁化や比熱の温度依存性を考える上でも重要である。カイラル対称性と磁性の関連については、スピン密度波のアイデアを提出した。従来のスカラー秩序変数を擬スカラー変数とともに考えることによってカイラル対称性の回復に対して新たなシナリオを得ることができた。
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