研究課題
「原子核における新しいタイプのクラスター構造」の典型例である「αクラスターのボーズ凝縮状態」の研究を大きく前進させた。12Cに対しては実験で観測されている第2の0+状態がαクラスターのボーズ凝縮状態であるととはほぼ確定となったが、第2の2+状態がこのαクラスターのボーズ凝縮状態の励起した状態であることを理論的に明確にしたのである。第2の2+状態の存在は1昨年度に実験的に明らかにされたのであるが、この状態の励起エネルギーと崩壊幅の実験値はα凝縮波動関数により良く再現されることが示された。第2の2+状態を表すα凝縮波動関数の中味は、3つのαクラスターの内、2つはS軌道を占有し、残りの1つがD軌道を占有していることが示され、これは正に3つのαクラスターの全てがS軌道を占有している第2の0+状態の1粒子励起状態である。第2の2+状態の幅は狭くないので、束縛状態近似だけでははっきりした結果を引き出すのが難しく、ACCC法という共鳴状態を扱う理論を用いたのであるが、この理論では共鳴状態の波動関数を得ることができない。そこで、波動関数を引出しして状態の分析を可能とする新しい理論をACCC法を発展させて作り上げた。次に、160に対しては、実験で観測されている第5の0+状態が5つのαクラスターのボーズ凝縮状態に対応するとの予言を行ってきたのであるが、今年はこの予言を支持し強化する2つの成果が得られた。1つは、この状態の崩壊幅の測定値を理論が再現することを明らかにしたことであり、もう1つは、この状態への(α、α‘)非弾性散乱の微分断面積が理論計算によりほぼ再現できることが明らかにされたことである。
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