素粒子及び重力理論の分野の大きな課題である、重力の量子論とその物理的な帰結について研究を行いました。その有力な候補である超弦理論は高い次元で定義されているので、それを物理的に解釈するには余分な次元をコンパクト化する必要があります。本研究計画では、超弦理論の4次元時空を与えるような時間に依存した非摂動的解を調べると同時に、その現実的な応用として宇宙論との接点を探しました。具体的な研究内容とその成果は以下の通りです。 1.すでに求めたSブレイン解に、さらに量子論的補正を加えたときに解がどのような変更を受けるかを調べ、インフレーションが十分起こせる模型、機構を考えました。その結果、インフレーションは十分起こせるが、その場合4次元以外の内部空間の大きさがかなり大きくなることを示しました。この成果はすでに学術論文として書き、学術雑誌Physics Letters BおよびPhysical Review Dに掲載されています。またこれらの一連の仕事についてのレビュー論文の執筆を学術誌International Journal of Modern Physicsから依頼され、執筆しました。それ以外にも物理的に意味のある解がいくつかあることがわかったので、現在それらについて解析中です。 2.一方、以前に求めたブラックホールを含むブレイン解の一般的構成法をさらに一般化した方法を開発し、それにより一般的な解を構成しました。これも学術誌Physics Letters Bに掲載されています。 3.また、超弦理論の重力の量子論の応用として、supertubeと呼ばれる解の量子的状態を勘定し、対応するブラックホールのエントロピーの統計力学的解釈を与え、ブラックホールの量子論への大きな一歩をふみだしました。これらの成果は学術誌Nuclear Physics Bに2本の論文として掲載されました。
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