研究概要 |
素粒子及び重力理論の分野の大きな課題である、重力の量子論とその物理的な帰結について研究を行いました。その有力な候補である超弦理論は高い次元で定義されているので、それを物理的に解釈するには余分な次元をコンパクト化する必要があります。本研究計画では、超弦理論の有効相互作用である超重力理論による4次元時空を与えるような時間に依存したインフレーション解を系統的に調べ現実的な模型を得る可能性を調べると同時に、超対称性を持つ時間に依存した解により、ビッグバン特異点を量子論的に記述する可能性を明らかにしました。また超弦理論に関連したいくつかの高次元ブラックホールの性質を解明しました。その現実的な応用として宇宙論との接点を探しました。これらは、素粒子の基本的な理論と宇宙論の接点を解明する上で大変有用な結果です。具体的な研究内容とその成果は以下の通りです。 1.超弦理論の有効理論としての超重力解に、高次量子補正項を考え、宇宙論的に面白い解を系統的に求めました。これらの解により、宇宙初期のインフレーションや宇宙の加速膨張を説明できる可能性を明らかにしました。 2.超弦理論の超対称性を保つ解は、量子論的な性質の解明できる数少ない系です。このような解を超重力理論で構成することにより、宇宙初期のビッグバン特異点を記述できることをしましました。また、D2ブレインを含む種々の系を系統的に調べ,その物理的性質を明らかにしました。 3.現在宇宙の大部分のエネルギーはダークマターとダークエネルギーと呼ばれるもので担われていることがわかっています。これらが自然に相互作用をするはずであることを指摘し、観測による制限を与えました。 その他、超弦理論によるQCDの閉じ込め、非閉じ込め相の相転移や、ブラックホールのエントロピーとホライズンの面積の関係の普遍性についても、新しい成果を得ています。
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