研究概要 |
カーブラックホールの線形摂動論の基本方程式である,Teukolsky方程式の数値解をこれまでの方法では得られない,非常に効率的でかつ高精度な数値的方法で求めるコードを開発した.方法としては,Teukolsky方程式の斉次解を特殊関数の級数で表す方法を用いた.その研究の中で,この方法自体の非常に重要な問題点を発見した.この方法では,級数展開を収束させるために,ある特別なパラメータが導入されるが,振動数が大きくなると,従来は実数と仮定されていたこのパラメータが実数ではなくなり複素数となることが分かった.この点について数値的に詳細な研究を行い,複素数であっても,正しくTeukolsky方程式の解を表していることを確認した.その論文は現在投稿中である. 今後このコードを用いて,星がカーブラックホール周りの赤道面上の楕円軌道を運動する場合,及びより一般的な(赤道面に制限されない)束縛軌道を運動する場合などに放出される重力波などを計算する. 今年度はまた,スピンを持つコンパクト連星合体に伴う重力波を,レーザー干渉計重力波検出器のデータを解析して検出するための方法について研究を行った.スピンがある場合の重力波を3つのパラメータで近似的に表す方法を採用し,パラメータ空間を記述する計量を数値的に導出する方法について研究を行い,数値コードを開発した.そして,重力波検出のために用意しなければならないテンプレート数を評価し,ノイズによって大きな相関を得る確率と検出効率の関係について調べた.また,3つのパラメータで記述されるテンプレートのパラメータ空間内において,探査のためのパラメータ点を効率的に配置する方法について研究を行った.
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