研究課題
本研究の主な目的は深部仮想コンプトン散乱や深部仮想中間子生成反応等の高エネルギー過程を通じて測定可能な核子の一般化パートン分布の理論的解析により、核子スピンの謎と呼ばれるハドロン物理最大の謎の一つを解明することである。ここで中心的な役割を果たすのが、2つの非偏極一般化パートン分布関数HとEという量である。非常に興味深い事実は、H+Eという関数のBjorken変数xに関する1次のモーメントは核子の電磁的磁気能率を与え、2次のモーメントは核子のスピンへのクォークの寄与を与えることである。すなわち直観的にも予想される核子の磁気能率と構成粒子の運ぶ角運動量の関係が、一般化パートン分布HとEを通じて厳密な関係として与えられるのである。分布関数Eの2次のモーメントは特に異常重力磁気能率と呼ばれているが、面白いことに、この量に対する全クォークの寄与の和は0であることが、カイラル・クォーク・ソリトン模型だけではなく、格子ゲージ理論の数値シミュレーションによっても示唆されている。この事実の解析的証明は未だ存在しないが、もし、それが本当に成り立っていると仮定すると、既に知られている事実のみを基に、著しい結論に導かれる。すなわち、少なくとも、非摂動論的QCDが重要な役割を果たす低エネルギー・スケールでは、核子の全スピンの半分近くを、クォークの軌道角運動量が運ぶという結論である。この結論は、異常重力磁気能率に対する予言を共有するLHPCやQCDSFなどの格子理論グループの結論と矛盾するが、その原因は、格子ゲージ理論の計算が現実のカイラル世界から程遠いheavy pion worldでなされたものであることによる可能性が高い。実際、フレーバー1重項のクォーク縦偏極に対する格子ゲージ理論の予言はEMC実験と矛盾するし、またこの量は、パイ中間子質量に非常に敏感であることを模型の範囲で確かめた。
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in Proceedings of Advanced Studies Institute on Symmetries and Spin (2005), Prague (印刷中)
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