研究概要 |
重水素の光分解反応D(γ,n)のM1断面積をD(7Li,7Be)n-n反応から導出する方法を明らかにした。宇宙初期では数keV〜数100keVのエネルギーで核子は熱運動している。このエネルギー領域のD(γ,n)反応断面積は原子核合成反応で非常に重要な役割を果たす。特に反応しきい値近傍ではM1断面積が優勢になり、E1断面積の1/v則が適用できない。D(1+)→p-n(0+)ではのM1遷移が優勢になるためである。M1断面積をしきい値付近から数100keVまでの測定が重要になる。 今回考案した方法は励起エネルギーの関数として断面積を導出する方法である。実光子を使う変わりに、相互作用の類似性を用いて光分解反応の断面積を求める。荷電変換反応(7Li,7Be)反応ではスピン反転過程とスピン非反転過程を区別して測定できる特徴がある。スピン反転過程ではD(1+)→n-n(0+)の過程だけを選び出すことができる。荷電対称性からD(1+)→p-n(0+)の断面積を求めることができる。 実験は大阪大学核物理研究センターのリングサイクロトロンで加速された455MeV ^7Liビームを用いてなされた。D(^7Li,^7Be)n-n反応で励起されたスピン反転スペクトルを測定し、重水素のM1光分解反応の断面積を求めた。断面積はGT遷移強度がわかっている遷移で断面積を校正した。しきい値から数MeVのエネルギー範囲で重水素のM1断面積を求め、測定結果は実光子を用いた数100keVでの断面積と誤差の範囲で一致した。 光分解反応の断面積はエネルギーの励起関数として測定する必要があるが、この手法では原子核反応のエネルギースペクトルから1回の測定で注目するエネルギー範囲の断面積を得ることができる。この方法は重水素に限らず他の光分解反応にも適用できる。
|