研究概要 |
(1)原子炉が一般に複数個、測定器が近距離と遠距離に最低1個存在する場合に、全イベント数の情報のみを用い(レート解析)、主として解析的な手法によりsin^2 2θ_<13>の感度を議論した。その結果、原子炉が複数個存在することによる付加的不定性は測定器を複数箇所(近距離に最低1個、遠距離に1個)に設置することにより問題とならないことを示した。又、KASKA計画の場合に、近距離測定器・遠距離測定器をそれぞれどこに設置すると最高の感度が得られるかを、数値的に解析して感度の等高線を引くことにより議論した。(2)上述の解析を、エネルギースペクトル解析による場合に拡張し、エネルギービン間に非相関の系統誤差が非常に小さくならないとレート解析による限界値を大幅に改善することが難しいことがわかった。(3)θ_<13>の感度は、測定器の非相関系統誤差でほぼ決まってしまい、測定精度には限界値があることがこれまでの研究代表者の研究で明らかになっているが、その限界値を超えるためのアイデアとして、同一の測定器を一箇所に複数個設置することを提案した。(4)東海村→神岡で行われるT2K実験でニュートリノと反ニュートリノの測定が振動最大のエネルギーで行われた場合、さらにどのような実験を行えばパラメーター縮退の問題を解決できるかを、(sin^2 2θ_<13>,1/s^2_<23>)平面内の新しいプロットを導入することによって議論した。(5)1000km以上の基線の実験により標準的な物質効果からのずれをテストする方法は、新しい物理を探索するために有効であり、現行・将来の長基線実験で新物理の兆候が出得ることを指摘した。又、この議論の過程で、木村らによる、標準的な物質中の3世代ニュートリノの振動確率に関する解析的結果を新物理がある場合に拡張し、見通しの良い方法で振動確率の近似式を求めることに成功した。
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