ブレーンワールド・モデルにおける重力相互作用は、長距離ではアインシュタインの一般相対性理論とほぼ同じだが、短距離においては5次元時空の重力理論に従う。この性質により、エネルギー線密度の非常に大きな宇宙ひもが重力崩壊を起こし、ブラック・ストリングを形成することが可能になる。この宇宙ひもは真空の相転移の際に形成される。我々の宇宙における真空の相転移のエネルギー・スケールは、重力相互作用の量子効果が重要になるプランクのエネルギー・スケールより小さいと考えられている。プランク・スケール以下の相転移で形成される宇宙ひもの線密度は、重力崩壊を起こすほど大きくはなれないので、我々の宇宙において、宇宙ひもがブラック・ストリングを形成することは無いと思われるが、実はこの問題はそれほど単純ではない。今年度は、タイプIの宇宙ひもの合体過程を考慮すると、たとえ形成時の線密度が小さくても、合体による線密度の増加によって重力崩壊が起こりうることを明らかにした。このブラック・ストリングは、莫大な重力波放出をする可能性があるため、重力波天文学において重要な研究対象になる可能性がある。
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