研究概要 |
1)日本におけるクラスター構造研究の歴史が包括的に概括され,クラスター構造研究が明らかにした内容がまとめられた.クラスター研究が軽い領域から重い領域へ進むときの困難が整理され,著者らがそれをどのようにのりこえることができたか,クラスター研究のパラダイムの展開が論じられた,束縛状態と散乱状態を統一的に記述するとの著者らの視点でクラスター構造が重い領域の典型核において成立することが示されたことの意味が歴史的視点から論じられた.素粒子論研究122巻6号(2006年)「学問の系譜-アインシュタインから湯川・朝永まで」で「クラスター模型の展開」という題で招待講演として発表された. 2)原子核の虹散乱と核間相互作用が包括的に研究され,Journal of Physics G 50巻3号(2007年3月)に招待総合解説論文論文として発表された. 原子核は散乱において吸収が強く,相互作用ポテンシャルは表面でしか決まらないと長い間考えられてきた.しかしα粒子や軽い重イオンにおいては意外と吸収が強くなく,虹現象がみられる.これらの系においては,虹散乱の研究から核間相互作用を内部領域まで一意的に決めることが可能である.これらのポテンシャルは深い.核間相互作用は密度依存性をもつ有効2体相互作用の2重畳込模型でよく記述される.すなわち虹散乱の研究から有効2体相互作用をも精度よく決めることが可能となった.このように決められた有効2体相互作用は虹散乱のみならず原子核の種々の性質を調べるのに用いることができる.非弾性散乱においても低いエネルギーから高いエネルギーまで系統的に虹散乱のエアリー構造がみえることが示された.原子核の虹散乱のメカニズムが遠回り波・近回り波分解,内部波・外部波分解により明らかにされた.不安定核の散乱における虹散乱・エアリー構造の可能性についても論じられた.
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