炭素12の原子核のホイル状態として知られている0-状態は、炭素、酸素やより重い元素の合成においてきわめて重要な役割を果たす。このホイル状態はα粒子3個が緩やかにかすかすの結合した状態であることが原子核のクラスター模型研究で明らかになっている。最近、この3個のα粒子がエネルギーのもっとも低い0s状態に凝縮していて、ポーズ、アインシュタイン凝縮の状態にあるのではないかと議論されている。3個のα粒子がボーズ凝縮しておれば、その半径は非常に大きなものとなる。ところが、実験的には励起状態の半径を直接測るのは用意ではない。わたしたちは3個のα粒子がボース凝縮しておれば、核力によるレンズとしての屈折効果が著しく大きくなり、実験的にα粒子のホイル状態からの虹散乱で核虹(湯川虹)の見える高さ(エアリー極大値)が高くなること及び虹の縞模様(エアリー構造)がより顕著になることをα粒子の12Cからの散乱実験を分析し2004年に指摘した。今回このα凝縮による屈折効果の劇的な増大がプレレインボウ(プレ虹)において、より顕著に見られることを3He粒子の12Cからの散乱を分析し明らかにした。この研究をつうじてプレ虹散乱の研究が原子核のクラスター構造の性質を明らかにするうえで大変有用であることが示された。この研究方法はより重い原子核をふくめ広く適用できると思われる。 6Liは魔法核α粒子に2個の核子が緩やかにつけ加わった原子核で壊れやすく、散乱では吸収が強い系であると考えられてきた。わたしたちは6Liの12Cと16Oからの散乱を分析し、この系がプレ虹や虹散乱を示し、強吸収系ではないことを示した。プレ虹のエアリー構造も明らかにされた。したがって、核間相互作用が虹散乱をつうじてよく決定される。このことは6Heなどハローをもつ弱結合核においても虹・プレ虹の存在が期待できるかもしれないことを示唆する。
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