研究課題/領域番号 |
16540270
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研究機関 | 神戸常盤短期大学 |
研究代表者 |
田中 正義 神戸常盤短期大学, 衛生技術科, 教授 (70071397)
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研究分担者 |
藤原 守 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (00030031)
山県 民穂 甲南大学, 理工学部, 教授 (50068144)
中山 信太郎 徳島大学, 総合科学部, 教授 (70116846)
與曽井 優 大阪大学, 核物理研究センター, 助教授 (80183995)
下田 正 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70135656)
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キーワード | スピン交換断面積 / ポーラリメータ / 電子捕獲断面積 / SEPIS / スピン物理 / 星の元素生成 / スピンアイソスピンM1共鳴 / ニュートリノ |
研究概要 |
原子核及び素粒子物理に於けるスピン物理は原子核や素粒子の基本構造を理解する上で最も重要な道具を提供して来た。中高エネルギー領域でのスピン物理は主として偏極陽子、重陽子で行われてきたが、中高エネルギー偏極重イオンビームを用いた研究は、そのような偏極ビームを発生できる研究所がないので、皆無であった。偏極重イオンビームの中でも、偏極^3He^<2+>ビームは近似的に偏極中性子に対応するので、偏極陽子のカウンターパートと見なされ、その重要性は極めて高い。また、天体核物理の観点から、原子核のスピン・アイソスピンM1共鳴の詳細な研究が可能になるので、星の元素生成におけるニュートリノの寄与を高い精度で調べることが出来る。しかし、残念ながら現在までのところ、大強度・高偏度^3Heビームが供給できる研究所は世界に皆無である。 我々は2年前に本科研費及び大阪大学等の補助金の支援を受け、大強度・高偏度を目指して、偏極^3Heイオン源の開発を始めた。偏極生成に用いた方法は、低エネルギー(核子当たり1keV以下)での^3He^+イオンとアルカリ原子との異常に大きなスピン交換断面積が期待されることを利用するものである。我々のこの偏極イオン源をSEPIS(Spin Exchange Polarized Ion Source)と名付けた。 SEPIS実証のため、我々は低エネルギー^3He^+とルビジューム(Rb)原子とのスピン交換断面積の測定を可能にするベンチテスト装置を製作し、調整を行った。その結果、我々はSEPIS原理を実証するのに十分な300μA以上の^3He^+ビームを2.45GHz ECRイオン源から引き出すことに成功した。また、偏極Rb原子とのスピン交換過程で生成された偏極^3He^+ビームの核偏極度の測定のために用いられるポーラリメータ(ビームフォいる分光法形)は0.5%以上の精度で核偏極度測定が可能であることが分かった。 また、SEPIS法による最大偏極^3He^+のビーム強度は^3He^+イオンとRb原子との電子捕獲過程による^3He^+ビーム損失によって決定される。しかし、この系の電子捕獲断面積の測定は、今までのところ、皆無であったので、今回新たに電子捕獲断面積を広い入射エネルギー範囲に渡って測定し、大きな偏極ビーム損失がないことを確認した。また測定した結果が、原子イオン衝突理論(Semiclassical close coupling model)で定性的に再現されることも確かめられた。
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