研究課題
重元素の起源は、人類がいまだ明確な答えを持っておらず、解明が期待されている大問題のひとつである。なかでも、「鉄などの中程度に重い元素から、天然に存在する元素としては最も重い、ウランにいたる数十種類の元素が、宇宙のどのような環境で、どのような種類の原子核反応を経て生成され、地球に存在するに至ったか」、という問題は、特によくわかっていない。このウラン元素生成の有力な仮説として、「超新星爆発」とよばれる星の最後の大爆発によって、人類にとっては未知の種類の原子核が次々と生まれ、結果としてウラン元素が合成された、とする考えがある。ウラン元素合成過程には、数千種類以上の原子核が関わっていると考えられているため、実験情報が得られない核種について、原子核理論モデルをチューニングし、全体的に適用するしかない。また核反応の「反応の方向」や、「反応のスピード」は、超新星爆発による環境に左右される。従って、、この仮説を検証するためには、原子核反応と超新星爆発を記述する理論モデルを組み合わせることが必要不可欠である。さらに宇宙観測の分野とも連携をし、本当に超新星爆発がウラン元素生成の舞台となっているかどうか、観測的に特定する、というプロセスも必要となる。本研究課題は、平成16年10月に追加採択された。研究実績は以下のようである。ウラン元素生成過程を記述する核反応ネットワークについては、スーパーコンピュータを用いた大規模計算手法を整えた。超新星爆発モデルについては、ウラン元素合成が成功する条件を、現在精査中である。さらに実際に超新星爆発によってウラン元素生成過程が起きた場合に、そとから生じる特有な核γ線を日本が計画中の天文衛星を用いて検出可能かどうかを調べ、特定のケースについて期待が持てることがわかった。この成果は、平成17年1月、宇宙航空研究開発研究機構・宇宙科学シンポジウムにて発表された。