研究概要 |
本研究課題では,天然メタンハイドレート(NMH)の成分に近いメタン-エタン混合ハイドレート,メタン-エチレン混合ハイドレート(MEH)の単結晶を高圧ダイヤモンド・アンビル・セル(DAC)を用いて作製し,その弾性的性質および構造安定性を決定すること,さらにゲストメタン,エタン,エチレン分子の弾性的性質への役割(ゲスト-ホスト相互作用)を明らかにすると共に,様々なガス組成比のNMHの弾性的性質,構造安定性を評価するための基礎を構築することを目的としている。 本研究課題で新たに設置した小型プレハブ低温室(平成16年度,主要設備)より,混合ガスハイドレートの合成を行う安定した低温環境が実現できた。この低温室を用い,ガスハイドレート合成装置全体を約2℃の温度環境に保ち,エチレンハイドレート,MEHの合成を安定して行うことに成功した。さらに作製した各ガスハイドレートをDACの試料室に封入し,その単結晶を作製することにも成功した。 これら試料を加圧し,その存在圧力領域を高圧ラマン散乱測定より調べた結果,構造I型のエチレンハイドレート,MEHはそれぞれ1.6GPaと1.7GPaまで存在することが判明し,メタンハイドレートよりも広い圧力領域で安定であることが明らかになった。さらに,MEHの単結晶に対して高圧ブリュアン散乱測定法による独自の解析法を適用し,弾性的性質を調べた結果,MEHはメタンハイドレートよりも硬く,弾性的異方性も若干高いことが分かった。これらの結果は,構造I型ガスハイドレートのもつ2種のホストケージに,それぞれ適切なサイズのゲストメタン,エチレン分子が包接されたMEHの方がメタンハイドレートよりも高い構造安定性を持つことを表している。これらのことから,本研究によりNMHの弾性的性質,構造安定性を評価する基礎を構築することができたと考えられる。
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