研究概要 |
1.中性子スピンエコー(NSE)分光器の開発・改良 (1)ISSP-NSEの大幅な性能向上のため、NSE分光器の性能を決めるのに最も重要な磁場積分の不均一を大断面積に亘って補正する大口径(150mm)スパイラルコイルをはじめ各種の補正コイルの作製法の開発を進めた。 (2)大強度陽子加速器J-PARKのパルス中性子源JSNSに設置を考えた飛行時間法-NSE分光器のために、定常電流で働く白色中性子対応の新型スピンフリッパーを考案・開発を進めた。小型のフリッパーを新たに試作し、KEKのKENSに設置されているPOREおいて白色のパルス中性子ビームを用いて性能テストを行い、新型フリッパーがTOF-NSEに適したものであることを実証した。 2.両親媒性分子を含む複雑液体での構造相転移とダイナミクスをX線(SAXS)および中性子小角散乱法(SANS)と中性子スピンエコー法(NSE)により調べた。主な実績は次ぎの通りである。 (1)リン脂質DPPC/水系に塩化カルシウムを微量加えた系でのNSEとSANSにより脂質2分子膜の波状ゆらぎに関るダイナミクスの研究を進め、Zilmanらの理論の妥当性を検討した。また、脂質2分子膜の波状ゆらぎが誘起する構造相転移について議論した。 (2)膜の曲げの弾性率が脂質2分子膜より1桁小さい2分子膜をもつ非イオン性両親媒性分子C_<12>E_5/水系でのNSEとSANSにより膜の波状ゆらぎと構造の相関の研究をさらに進めた。NSEの解析にZilmanらの理論で無視されていた揺らいでいる膜間の相互作用を取り入れた最近のGovらの理論を適用し、その有用性を議論した。 (3)C_<12>E_5/水/油系およびリン脂質DPPC/水系での相図及び温度・圧力誘起構造相転移とダイナミクスを高圧下におけるSAXS, SANSおよびNSEにより調べた。
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