ランダム媒質中で多重散乱された光の干渉によって起きる光記録効果と、ランダムレーザーを組み合わせ、ランダムレーザーの出力の波長・波面・偏光状態の制御を試みた。多重散乱光の干渉による光記録効果を、蛍光ではなく、試料からの散乱光によって検出すると、凸型のホールとなることから、書き込みを行ったものと同じ条件の光に対して、試料内での光の損失が減少していることが確認された。このことから、このような媒質を通してレーザー発振を起こさせれば、書き込みによって発振条件を制御されたランダムレーザーが実現される可能性が高いことが確かめられた。そのためには、制御用の光によって光反応を起こすが、レーザー発振時の強い光の影響は受けないような光反応材料が必要となる。しかし、現時点までに、多重散乱光の干渉による光記録効果が安定して観測される光反応材料は得られなかった。そこで、過渡的な光反応材料と見なすことのできる可飽和色素を混ぜ込んだランダムレーザーを用いて実験を行い、可飽和色素の効果が確かめられた。FDTD法によるコンピューターシミュレーションを行い、多重散乱光の干渉による光記録効果によるホールの形状(強度相関関数)を求めた。ホール形状の計算結果のうち、ホール幅については、理論や実験から予想される値とよく一致し、この計算が、光記録効果に対応する結果を与えており、ランダム媒質中の電磁場の計算に有効であることが確かめられた。
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