研究概要 |
FeCl_2やCoCl_2などの金属塩を10wt.%のケイ酸化ナトリウム水溶液に沈めると、金属塩からケイ酸化金属チューブが成長する。その成長時に水平勾配磁場を印加すると、チューブの成長方向が鉛直上向きから磁場中心方向へ傾くとともに、チューブがねじれた構造(キラル構造)を形成するメカニズムを調査した。水平室温ボアを持つ17T超伝導磁石を用いて、磁場2.2T、磁気力場(磁場と磁場勾配の積)45T^2/mの条件下でケイ酸化コバルトチューブの成長を行い、チューブのねじれ方向を観察したところ、磁場と磁気力の方向が同じ場合には、成長方向に対して右ネジのねじれが認められ、逆の場合には左ネジのねじれが認められた。この観察結果により、チューブの成長端から放出される塩化物イオンの流れにローレンツ力が働き、成長端近傍に渦を作っているというモデルを考案した。これに対して、Uechiらにより、鉛直上向きの磁場中において、ケイ酸化亜鉛膜が管の内壁に沿ってヘリカルに成長するという結果が報告されて、ケイ酸ナトリウム水溶液中でブラウン運動するイオンに働くローレンツ力が誘導する渦に起因するというモデルが提唱された[1]。我々の観測したキラル構造は、自立したチューブ自体のねじれであるので、現象は異なっている。しかしながら、ねじれ構造の発現メカニズムは同一であると考えられたので、磁場中成長のその場観察によりモデルの検証を行った。まず、金属塩の固定化とアクリルパウダーによる水溶液の流れ可視化の手法を開発し、ボアスコープを用いてチューブ先端からの噴流とチューブのねじれ方向の渦流を観測することに成功した。これらは、我々のモデルを支持する結果である。また、我々のモデルによりUechiらの観測結果も説明できることを示した。 [1]Uechi et al., J.Phys.Chem B,108,2527(2004)
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