研究課題
基盤研究(C)
本研究では以下のテーマについて研究を遂行し、別紙のように論文を発表し、招待講演を含む多数の口頭発表も行った。変動する外場のもとでの量子状態の変化の特徴を微視的なエネルギー準位に基づき研究した。また、量子系由来の特異な物性や相転移を調べた。スピンクロスオーバー現象における準安定状態や磁場への応答、あるいはフラストレート系での非常に遅い緩和現象など、協力現象の動的性質についても研究した。単分子磁性体の一つであるV15の断熱磁化変化の微視的起源としてジャロチンスキー・守谷(DM)相互作用が考えられる。その効果はゼロ磁場での準位構造が磁場の方向によって敏感に変わり興味深い断熱磁化過程が現れることを発見した。さらに、磁化が1/2と3/2の状態が交差するときのエネルギー準位構造を反映した磁化の運動についての散逸の効果についても調べた。また、フラストレートした相互作用のもとで格子のユニットを反映しない自発磁化をもつ基底状態であること、非磁性の基底状態と磁気的な励起状態をもつ局所状態(分子レベル)をあらわすBlume-Capelモデルにおいて、励起状態の間に量子混合を許す相互作用を考えた場合に、量子ゆらぎによって誘起される特異な磁気状態が現れることを研究した。また、量子揺動誘起磁場中相転移が注目されているXY的な異方性をもつ三角格子反強磁性体の基底状態での磁化過程を異方性の強さの関数として調べ詳細な相図を得た。関連した系として三角クラスターをつなげた三角チューブといわれる系での基底状態と励起状態の間のギャップの有無に伴う基底状態相転移があることを明らかにした。また、スピンクロスオーバー錯体における相転移についても研究し熱力学的な安定相だけでなく、興味深い準安定状態の存在形態を発見し、光誘起相転移との関連について研究した。また、フラストレートした系における遅い緩和現象も研究した。
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