平成16年度はエアロジェル中の液体ヘリウムの超流動転移を観測するために必要な超音波実験装置の改良を行いヘリウム4を用いた予備的な実験を行った。また、超低温冷却に必要な銅一段核断熱冷凍機の整備を行った。これらについて以下のように概要を示す。 1.超音波実験装置の改良 液体ヘリウムの超流動状態を観測する手段として、第1に従来の我々の研究で実績のある縦波の超音波を用いる。縦モードの音波は十分強力な研究手段であるが、新たな研究手段として従来の縦波モードに加えて横波モードの観測も行う。両モードで、観測に適当な周波数帯域が異なることが予測されるので、現有測定装置の広帯域化が必要である。本年度備品費で購入したデジタルオシロスコープを用い、超音波測定系の改良を行った。これにより、高調波の測定も可能となった。また、測定モードと周波数に対応した超音波トランスデューサを消耗品費により購入した。 2.試料セルの設計 液体ヘリウムの実験では超流動転移の性質や音響特性が圧力により大きな影響を受ける。現在は室温部に圧力センサーを設置し、液体の圧力制御もこのセンサーにより行っている。低温部と室温部に固体が生成されるような高圧条件では、現在の方式では試料の圧力が正確に求められない。この問題を解決するために圧力の低温部でのその場観測が必要であり、このための試料セルの設計を行った。その材料を消耗品費にて購入した。 3.超低温での測定 以上の要素を統合し、実験システムを構築する。核断熱消磁による超低温領域での実験を行うために核断熱冷凍機の整備を行った。その過程で冷凍機の漏れなどの問題が発生したが、それを解決し準備を進めた。また、前段階として3Heクライオスタットを用いた実験を行った。その結果、新たに発見された現象について論文発表や国際シンポジウムでの発表を行った。
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