研究概要 |
金属絶縁体転移をする物質として古くから知られているVO_2とTi_2O_3において、Vイオンの3d軌道の縮重度を考慮した多電子描像に基づく有限サイズクラスター模型を用いて、その電子状態を議論した。VO_2とTi_2O_3の転移は従来から指摘されているような単純な意味でのMott転移でもPeierls転移でもなく、電子配置の大きな変化を伴った新しいタイプの転移であると考えることにより、統一的な見地から理解できることを示した。この転移においては3d原子内交換相互作用と格子歪みの両者の存在が本質的である。転移により逆光電子分光スペクトルおよび遷移金属L_<2,3>吸収の線二色性に大きな変化が予想され、予測されるスペクトルの計算も行った。 フェリ磁性体であるマグネタイト(Fe_3O_4)は、120K付近でVerwey転移と呼ばれる金属絶縁体転移を起こすが、その転移機構はいまだ明らかになっていない。我々はこの物質における円偏光入射2p内殻共鳴光電子分光実験の解析を行い、価電子帯頂上付近の3d電子状態について詳細な情報が得られることを明らかにした。また、低温相における軌道・電荷秩序状態についてもt_2g軌道の縮重度を考慮したspinless拡張Hubbardモデルを用い議論した。その結果、この物質の低温相においては従来から議論されていた電荷秩序のみでなく、noncollinearな軌道モーメントを伴った軌道秩序状態が存在する可能性があることを指摘した。
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