研究概要 |
エアロジェル中の超流動he-3は異方的BCS状態での不純物効果を調べる典型例として注目を浴びている。この系について,A相のパルスNMR特性、B相の音波伝搬について調べた。 1.A相のパルスNMR エアロジェル中のA相の秩序パラメータの構造は未だに明らかになっていない。最近カピッツァ研究所のFominがA相の候補として新しい非ユニタリ状態を提案した。我々はこの状態でのパルスNMRの共鳴振動数のパルス幅依存性を計算した。その後大阪私立大学のグループが行った実験結果は我々の理論的予言と一致しており、A相がFominの提案した状態であることを示唆している。この研究結果は16年7月の量子液体固体国際会議(QFS2004)で発表した。 2.エアロジェル中超流動ヘリウム3における超音波吸収実験の解析。 超流動相がBalian-Werthamer状態にあることを仮定し、理論モデルに含まれるパラメータを適切に選ぶことによって、常流動相から超流動相までの全温度領域で実験結果を再現することに成功した。この研究は11月に東京で開かれた国際会議(ISSP-9)の招待講演に選ばれた。 3.超流動秩序変数の集団励起に対する不純物効果。 純粋な超流動ヘリウム3では、squashing modeと呼ばれる秩序変数の集団励起が超音波吸収ピークとして明瞭に観測されるが、エアロジュル中では観測されないことがNorthwestern大学の実験グループによって報告された。その原因として、不純物散乱による準粒子状態密度の構造変化が考えられることを本研究で示した。この研究結果は2005年8月にフロリダで開かれる低温物理国際会議(LT24)で発表する予定である。 上記の研究と平行して超流動ヘリウム3の音響インピーダンスの理論的研究を行った。従来の理論では考慮されていなかった、表面散乱による対破壊効果を定量的に評価することによって、実験とのよい一致が得られることを示した。超流動ヘリウム3のA相とB相での音響インピーダンスの数値計算結果を、それぞれ、QFS2004とISSP-9で報告した。
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