研究概要 |
本研究では、重い電子系超伝導体のUPt_3,CeIrIn_5,CePt_3Siを主な対象に選び、ジョセフソン素子、特にコーナー型素子のように二つの異なる方向の間での超伝導秩序変数の位相変化を検出可能なジョセフソン干渉計の研究を通じて、異方的な秩序変数の情報を得ることを目指した。 まず、UPt_3については、b軸とa軸に垂直な二つの面でできたコーナー上の素子(ジョセフソン干渉計)の研究を行ったが、b軸方向とa軸方向の間での秩序変数の位相の変化を示唆する異常は見られなかった。臨界電流の大きさは二つの方向の間で大きく違ってはいないことが確認できたので、実際に位相変化はないと考えられ、例えば欧米のグループが主張しているE_<2u>の秩序変数は本研究の結果を説明できないことが明らかになった。 また、CeIrIn_5については、単一電流方向の素子で、[100]軸方向、[110】軸方向とも、フラウンホーファー回折図形に近い磁場依存性が得られ、d波超伝導状態のnode方向で期待される異常は観察されなかった。また、[100]軸-[010]軸両方向の電流からなるコーナー型素子を作成し、ジョセフソン干渉計の研究を行ったが、二つの方向それぞれの臨界電流が大きく異なっているためか、今のところd_x^2-_y^2状態を確証するような特性は見出されていない。 一方、最近見つかったCePt_3Siについては、結晶に反転対称性を持たない特異な物質であり、急遽、ジョセフソン効果の研究を行った。その結果、a軸方向については各場所から位相のそろったジョセフソン電流が流れ出ていることが確認できたが、c軸方向では零磁場下でも場所ごとで位相が揺らいでいることがわかった。この原因としては、磁束トラップの影響の可能性も否定できないが、時間反転対称性の破れた超伝導状態を反映している可能性もある。
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