研究概要 |
本科学研究費の補助のもとで,我々は,種々の1次元S=1スピン鎖の有限磁場中基底状態を,数値的方法および解析的方法を用いて研究した。これまでの主な研究実績は,以下の通りである。 1.一軸性の1イオン型異方性エネルギーをもつ1次元S=1反強磁性強磁性ボンド交代鎖:この系の有限磁場中基底状態を密度行列繰り込み群法を用いて数値的に調べ,基底状態磁化曲線中の飽和磁化の半分の位置に磁化のプラトー異常性(通常,1/2-プラトーと呼ばれる)が出現することを明らかにした。更に,有限系の厳密対角化法に基づいたレベルスペクトロスコピー法および解析的方法を用いて,1/2-プラトーにHaldane型のものとlarge-D型のものの2種類が存在することを確かめ,相互作用定数平面上の1/2-プラトー相図や相互作用定数対磁場平面上の磁化相図を詳細に決定した。 2.異方的1次元S=1反強磁性鎖:XXZ型の異方的交換相互作用と一軸性の1イオン型異方性エネルギーをもつ1次元S=1反強磁性鎖の有限磁場中基底状態を,主として数値的方法を用いて調べた。種々の相互作用パラメータの値に対して,密度行列繰り込み群法を用いて基底状態磁化曲線を計算し,磁化曲線に磁化のジャンプ異常性(1次転移)が現れることを明らかにした。特に,相互作用係数の値によっては,磁化の値が有限値から有限値までのジャンプが起こることが見出された。この現象は量子スピン系においてはこれまでに知られていなかった現象である。また,有限磁場基底状態中で起こるcommensurate-incommensurate転移(2次転移)についても調べ,有限系の厳密対角化法に基づく坂井の方法を用いて,この転移を与える磁化の値(転移点)を計算した。更に,これらの点移転と上記の磁化のジャンプの始点と終点の磁化の値とを合わせて,磁化対相互作用定数平面上の相図を決定した。
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