研究概要 |
今年度は,主として,"容易軸型1イオン異方性エネルギーをもつS=1反強磁性梯子系の有限磁場基底状態",および,"ボンド交代最近接相互作用と一様な次近接相互作用をもつS=1反強磁性鎖の基底状態磁化曲線"の研究を行った。以下では,前者の研究の概要と結果について述べる。 S=1梯子系における,桁(rung)方向の反強磁性交換相互作用定数J_<rung>と脚(leg)方向の反強磁性交換相互作用定数J_<leg>の比をJ_<rung>/J_<leg>=5.0に固定し,種々の容易軸型1イオン異方性エネルギー定数D(【less than or equal】0.0)の値に対して,密度行列繰り込み群法を用いて,基底状態磁化曲線を計算した。その結果,磁化曲線に,‘磁化のプラトー異常性'と‘磁化のジャンプ異常性'が現れることが明らかになった。1)‘磁化のプラトー異常性'についての主な結果:2種類のプラトー,すなわち,並進対称性の自発的破れ(SSB)を伴うプラトーとSSBを伴わないプラトーが,飽和磁化の半分の位置(m=1/2;mはスピン当たりの平均の磁化)に出現する。野村・北沢による‘ひねり境界条件レベルスペクトロスコピー法'を用いて詳細に解析した結果,SSBを伴わないプラトーの出現領域は-0.615<D<0.0であり,また,岡本・野村による‘レベルスペクトロスコピー法'を用いて詳細に解析した結果,SSBを伴なうプラトーの出現領域はD<-0.980である。D→-∞でSSBを伴なうプラトーが出現することは,この極限でS=1スピンをS_<eff>=1/2有効スピンで置き換えることが出来ることを考慮して縮退摂動計算を行うことによっても確かめられる。2)‘磁化のジャンプ異常性についての主な結果:|D|の増加に伴って,D【less than or similar】-0.77でm=0.0からm=m_1(0<m_1【less than or equal】0.5)への磁化のジャンプが現れる。m_1の値は|D|の値ともに増加し,D【less than or similar】-1.55ではm_1=0.5となって,m=0.0からSSBを伴う1/2-プラトー状態への直接の磁化のジャンプが見られる。
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