研究概要 |
Rb_2Cu_2Mo_3O_<12>の磁性を研究した。実験と理論計算の結果の比較から、第1近接相互作用(J_1)が強磁性で第2近接相互作用(J_2)が反強磁性であるスピンが1/2(S=1/2)の1次元ハイゼンベルグスピン系(競合系)のモデル物質であることが分かった。相互作用の値は、J_1=-138K、J_2=51K(α=J_2/J_1=-0.37)ともとめられた。このαの値から基底状態は非磁性のインコメンシュレイト状態となる。 Cu_2CdB_2O_6の磁性を研究した。この物質では、Cu(1)とCu(2)という2種類のCuサイトが存在する。スピン間には3種類の反強磁性交換相互作用(J_1,J_2,J_3)が働いていると考えられ、J_1によって2つのCu(1)スピンが反強磁性ダイマーを作り、J_3によってCu(2)スピンが反強磁性鎖を作り、J_2がCu(1)スピンとCu(2)スピンを結びつけている。 帯磁率と比熱の温度依存性から、TN=9.8Kで反強磁性転移が起こり、磁化の磁場依存性から、23T以上で1/2磁化プラトーが現れることが分かった。J_1=160K, J_2=38.8K, J_3=9.7Kとした場合の量子モンテカルロシミュレーションの計算結果は実験結果を良く再現できる。 磁気的な状態は以下の通りである。23T以下では、Cu(1)スピンが局所的にほぼ非磁性なペアを作っていて、Cu(2)スピンは反強磁性秩序状態を作っている。一方、23T以上では、Cu(1)スピンの状態は変わらないが、Cu(2)スピンはほぼ磁場方向に向いて磁化が飽和している。結果として、ギャップを持つほぼ非磁性な状態と反強磁性秩序状態という対極にある2つの状態が、空間的に隣接して、それら2つの状態間の磁気的相互作用が無視できないにも関わらず、共存することを発見した。このような共存状態を持つ物質は他には知られていない。
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