研究課題/領域番号 |
16540335
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松原 史卓 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90124627)
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研究分担者 |
白倉 孝行 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (90187534)
鈴木 伸夫 東北文化学園大学, 科学技術学部, 講師 (30302186)
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キーワード | リエントラント相転移 / スピングラス / モンテカルロ・シミュレーション / 希釈強磁性体 / 磁気双極子相互作用 |
研究概要 |
1.リエントラントスピングラス転移模型の提案 多くのスピングラス(SG)物質で温度を下げて来ると一度強磁性相になり、更に温度を下げると強磁性が消失しSG相が出現する。これはリエントラントスピングラス(RSG)転移とよばれ、実験的に約30年前に発見されたが、理論的にはその出現機構はおろか、RSG転移を示すモデルさえ見つかっていない。SG問題の最大の謎である。前年度の研究で、我々は強磁性最近接相互作用と反強磁性第2近接相互作用を持つハイゼンベルグモデルを非磁性原子で希釈した希釈強磁性モデルを提案した。 本年度は、このモデルの磁気秩序を詳細に検討し以下のことを明らかにした。 (1)ある磁性濃度領域で磁化MはRSG的振る舞いを示す。即ち、温度を下げてくると、磁化Mは一度増大し、更に温度を下げると減少する。 (2)相転移の有無を示す指標、ビンダー比g(L)、はこのモデルが2つの温度T_1,T_2(<T_2)で強磁性相転移を起こすことを示した。T_1で強磁性が出現しT_2で消失す。 (3)SG相関長解析は低温でSG相が起こることを示した。 以上の結果よりこのモデルがRSG転移モデルのひとつになると結論した。これはRSG転移モデルの最初の例である。 2.希釈強磁性体の磁気相図 提案したモデルの磁気秩序を様々な磁性原子濃度で調べ磁気相図を完成した。この相図は、常磁性相、強磁性相、スピングラス相、強磁性とスピングラスの共存相の4相から構成され、実験的な磁気相図を定性的に再現している。 3.磁場中SG 磁場中でSG相転移が起こるか否かの問題はSGの低温相の問題とも関連して盛んに議論されている。多くの議論はイジングモデルで成されている。我々はこの問題をより現実的なハイゼンベルグモデルで調べ、ハイゼンベルグSGは磁場中相転移を起こすことを明らかにし、磁気相図を提案した。
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