研究概要 |
平成17年度の実験としては、カーボンナノチューブを直径0.1mmのガラスキャピラーに充填しこれを抵抗体としてその電気抵抗のゆらぎの測定を行なった。試料のカーボンナノチューブは単層および多層で単純な円筒状のものと多層で先端部がコーン状に閉じたものの計3種類を用い、温度を300Kから100Kまで変化させながら測定を行なった。その結果カーボンナノチューブの抵抗のゆらぎは1/f型のスペクトルを持ち、温度の低下とともにその強度が減少する事がわかった。スペクトル強度の現象度合いは円筒状構造のカーボンナノチューブが1/70程度に減少するのに対し、先端がコーン状に閉じたカーボンナノチューブではわずか1/4程度であった。また、抵抗値そのものの変化はどちらの試料も2倍程度の増加であった。コーン状の先端構造は円筒の軸方向と円周方向の振動モードの結合に寄与し、試料温度が下がってもモード間相互作用が頻繁に起こると考えられる。以上より、抵抗の1/fゆらぎが、原子振動のモード間相互作用に関連して発生する事が推測された。さらにシミュレーションとしては、構造は1次元でありながら3次元的な変位が可能な系での電子の散乱確率の変動が1/fゆらぎとなることを示した。このような系ではフォノンモード間の相互作用が容易に行なわれるため1/fゆらぎが発生すると考えられた。その内容は18th International Conference on Noise and Fluctuations, 2005, 795-798に報告した。また、非平衡のフォノン分布ではt^<1/2>で緩和し、そのゆらぎが1/f型スペクトルをもつ事がわかった。その内容はJournal of the Physical Society of Japan, Vol.74 No.10, 2005, 2708-2711に報告した。
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