スピングラスおよびパイロクロアの双方のフラストレート系の磁気秩序化について理論的・数値的研究を行い、以下の成果を得た。 異方的ハイゼンベルグスピングラスについて、磁場中の大規模熱平衡シミュレーションを行い、系が磁場中でレプリカ対称性の破れ(RSB)に伴う熱平衡相転移を示すことを明らかにした。また、カイラリティ自由度がこの相転移において重要な役割を果たしていることを示した。得られた磁気相図や転移線の振る舞いは、最近のフランスのグループ等の実験結果と整合的である。 パイロクロア格子上の古典ハイゼンベルグモデルを対象に、第2近接相互作用、1軸的磁気異方性、ランダムネスの効果を取り入れ、これらのパラメータ値を系統的に変化させて系の秩序化の様相を調べるモンテカルロシミュレーションを行った。これらは、相互作用の符号が強磁性的か反強磁性的か、磁気異方性の符号が容易軸的か容易面的か、どのようなタイプのランダムネスか、の組み合わせによって非常に多様な振る舞いを示すことが明らかになった。本年度は特に、反強磁性的第1近接相互作用と強磁性的な第2近接相互作用を有する等方ハイゼンベルグ系の磁気秩序化を、温度交換法によるシミュレーションで詳しく調べ、低温で系が特異な揺らぎを伴った秩序状態へと相転移を示すことを見出した。
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