研究概要 |
本研究では非線形動力学および非平衡統計力学における基礎的課題の解明とともに、現実の複雑な対象に向けてカオス・非線形理論を応用した。研究の個別テーマは、次の三項目である; (1)量子カオスの基礎理論の解明 (2)エルゴード性が破れている系の統計力学と異常拡散の研究 (3)ボーズ=アインシュタイン凝縮相におけるソリトンや渦のダイナミクスと非線形量子力学の研究。 ボーズ=アインシュタイン凝縮相における、ソリトンや渦のダイナミクスの研究が盛んであるが、これは、巨視的波動に対する非線形シュレーディンガ-方程式の研究を基礎にしている。われわれは、これをミクロの世界における、量子カオスの基礎方程式へと一般化できないかと考え、波動関数の時空カオス的振る舞いの可能性を探った。そして、この非線形量子力学からどのような現象が期待できるのかについて考察した。観測問題やEPRパラドクスとの関連、さらに、場の理論への影響をも考察した。 具体的に,BECにおける巨視的波動のダイナミクスを記述するグロス=ピタエフスキー方程式(非線形性シュレーディンガー方程式)を用いて、量子力学で重要な効果である、非断熱効果とトンネル効果を解析した。波束が重力に抗して上昇する可能性,非線形項の役割を明らかにした。ボーズ=アインシュタイン凝縮体の運動は非線形シュレーディンガー方程式で表せる。1次元非線形シュレディンガー方程式にはソリトン解があり、外部ポテンシャル中では古典粒子のように振る舞う。外場ポテンシャルにさらに振動などを加えるとソリトン運動はカオス化するが、この物質波動場のカオスと量子カオスとの関係性を調べた。
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