本研究は定性的に非一様な結合振動子系の振る舞いを特に引き込み(同期)現象やカオスに重点をおいて3年間にわたって調べるものである。初年度(平成16年度)においては大域的かつ拡散的に結合した振動子集団のなかの一部の振動子が劣化して減衰振動子に変わり、その割合(p)が増えていくときに、ある臨界割合で系全体の振動活性が失われる現象(エイジング転移)を見いだした。そして、この転移点近傍で系のオーダーパラメーターが普遍的なスケーリング則に従うことを明らかにした。今年度は、これらの結果がリミットサイクル振動子結合系のみでなくカオス振動子結合系でも成り立つことのより詳しい証拠を提出した上で(論文1)、主として以下の二つの課題に取り組み、様々な興味深い結果を得た。 (1)クラスタリングの発生機構 上で述べた結合振動子系において、自律的な振動子のグループは、あるパラメーター領域でクラスタリングを起こす。これは、拡散結合の強さを大きくしていくときに、かえって系の非一様性が増すという、直感に反する極めて興味深い現象である。簡単のためp=0として、このような現象(拡散誘起の不均一性)が起こる機構(スイングバイ機構)を明らかにした(論文2)。 (2)クラスタリングのp依存性 上述のクラスタリングが起こる領域や非同期の度合いが減衰振動子の割合pとともにどのように変化するかをシミュレーションによって明らかにした。そして、クラスタリングの種類を最も簡単なタイプ(1個をのぞくすべての自律振動子が同期するもの)に限定することにより、理論的にクラスタリングの起こる領域を求め、実際には様々なタイプのクラスタリングを含みきわめて複雑なシミュレーションの結果を、ある程度まで説明することに成功した(論文2および投稿準備中)。
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