研究概要 |
本研究では主として、リミットサイクル振動子やカオス振動子(総称してアクティブな振動子)が広い意味での減衰振動子(インアクティブな振動子)と共存する非一様な結合振動子系において後者の割合が増えることにより、系全体のダイナミックスがどのような影響を受けるかを明らかにした。 1.エイジング転移 例として、スチュアート・ランダウ(SL)振動子やレスラーモデルを選び、結合強度Kがある臨界値より大きいとき、インアクティブな振動子の割合pを大きくしていくと、ある所(p<1)で系全体が振動を停止する(エイジング転移)ことを見いだした。 2.エイジング転移点近傍での普遍的スケーリング則 エイジング転移を特徴づけるオーダーパラメーターとして平均場の振幅Mを導入し、これがエイジング転移点の近傍で普遍的スケーリング則に従うことを明らかにした。 3.脱同期ホーン-アクティブな振動子の同期の破れ- 振動子の非等時性がある程度以上強いときに、アクティブな振動子のグループが(K, p)相図上のホーン状の領域(脱同期ホーン)でクラスタリングを起こすことを見いだし、SL振動子系について、この現象を詳しく調べた。 4.拡散誘起の不均一性-スイングバイ機構- SL振動子系の脱同期ホーン内で起こる拡散誘起の不均一性の機構(スイングバイ機構)を明らかにし、不均一性がもっとも高まる結合強度の値を見積もる理論を提出した。 5.オーダーパラメーターの実験的測定法 結合振動子系の振る舞いを実験的に研究する際に、秩序パラメーターを一つのマクロな量の時系列データのみを用いて見積もる方法をバージニア大学の実験グループと協同で提案した。この方法をエイジングのある場合に拡張することは今後の課題である。
|