ツララの表面不安定性理論の研究において最大の問題点は、表面張力である。 表面張力はツララ表面を流れる水膜の厚さに変化をもたらし、不安定性を引き起こすが、その不安定性は短波長でも抑えることができず、このために実験で観測される波長を理論的に得ることができない。 以前の理論では、不安定性をラプラス場に、安定性を流体に求めたが、表面張力のもたらす不安定性は予想以上に大きく、短波長での安定性を維持できないことがわかった。この短波長で安定性をもたらす因子を仮定して、モデルを作るといった理論的作業を繰り返している。 一方で、水の表面張力の静的、および動的な性質を研究することにした。 水の表面張力の値は未だに理論的に得られていない。その理由は水が非常に強い双極性液体であることに由来しており、その強さゆえに、通常の双極子・双極子相互作用を近似する方法が用いられない。 このために統計力学において新しい近似方法を開発し、水のダイナミカルな表面張力を求めることに成功し、現在レフェリーとやり取りの最中にある。 実験研究については、昨年夏からの実験装置の開発改良、および、この3月に現実のツララ表面のその場観察を行ってきたが、特に新しく理論を発展させる材料は今のところ得られていない。 この間の研究に関する論文は雑誌にはまだ発表されていないが、研究会と学会での発表を行った。 1)日本結晶成長学会 2004年8月 2)北海道大学 低温科学研究所 研究会 2005年2月
|