つららの表面不安定に関して実験からの示唆を得るべく、今年度は実験的研究を主に行った。 我々の理論に表面張力を取り込むと、つらら表面を流れる水膜の厚さに変化をもたらし、流体による短波長の抑制効果を維持できないことがわかる。さらに凸部分の下方では水膜の厚さが薄くなるためにそこでの温度勾配が大きくなり、凸凹は下方に移動する。これに対して、表面張力の取り込みによって、実験結果に一致する波長が得られ、さらには凸凹が上方に移動するという趣旨の理論の論文が他者から提出されている。 この論文の近似の方法は怪しいのだが、つららの断面写真からつらら内にある気泡が中心線から動径方向に斜め上方に分布しているのが観測されており、これはつららが太くなるにつれて、凸凹が上方に移動していることを示唆しているように見える。これをもってこの論文は正当性を主張しているのであるが、気泡の上昇が果たして凸凹の上昇を意味しているのかどうかという点は全く明らかではない。 今回の実験的研究では、つららの成長過程をビデオ撮影し、また、自然界に存在するつららの断面の偏光板観測によって、(1)凸凹が上昇するような現象は実験で観測されない(2)つらら内部の多結晶の偏光板観測によって、それぞれの単結晶は凸凹の部分で上方に成長しているようには見えないという二点を明らかにした。しかしながら、この点については、理論とあわせての発表を考えており、公表は対応する理論が出来たうえで行いたいと考えている。 次に、つらら表面の形態によく似た現象を鍾乳石に見出した。当初は石筍やつらら石の周りの周期構造を考えたが、観測によって、どちらもはっきりした周期構造が見出せなかった。 しかしながら、カーテン石と呼ばれる、ある種の鍾乳石のすそに、きわめてはっきりした周期構造が発見された。 この周期は、水の毛管長と同じ大きさのオーダーであり、理論の構築は大まかに予想が立ち、現在計算中である。 計算終了まで、しばらく時間が必要。
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