研究概要 |
これまでの論文(J.of Phys.A34(2001)10441, Phys.Lett.B463(1999)257)で,区間I_q:={±1/2,±q/2,±q^2/2,…}(qはパラメータ)で定義された無限次元Hilbert空間l^2に基づくADHM構成法のq-類似を提出し,1パラメータqを持つR^4における(反-)自己双対SU(2) Yang-Mills場を構成した.また,上記論文で,Nahm方程式の1つのq類似として,次の形のq-Nahm方程式を提出した.D_qはq差分演算子である. D_qT_j(z)=(1/2)ε_{jkl}(T_k(qz)T_l(z)-T_l(qz)T_k(z)),j,k,l=1,2,3 (1) 本年度は,上記q-Nahm方程式(1)をさらに考察し,以下の3点を明らかにした. 1)q-Nahm方程式(1)には,Nahm方程式の球対称解と全く同じ形の次の特殊解が存在する. T_j(z)=-{σ_j/(2i)}{l/(z-z_l)},z_lは任意定数 2)q-Nahm方程式(1)は,列ベクトルφ(z)に対する以下の2つの線形q-差分方程式の両立条件(compatibility condition)から導くことができる. (D_q+A_+(z))φ(z)=0 (2) (ηT十A(z))φ(z)=0 (3) ここでA_+(z)とA(z)はT_j(z)の線形結合,Tはシフト演算子,ηは複素パラメータである. 3)φ(z)の非自明性を仮定すると(2)と(3)より次式が導ける. det{ηI+ηA_+(z)(l-q)z+A(z)}=0 (4) 特に(4)式は,何らかの幾何学的対象上のスペクトル曲線を定義している可能性があり,従って,q-Nahm方程式(1)の保存量とも関係していると考えられる.これらについては研究を継続中である. また,本研究との関連性は未知であるが,分数階Riemann-Liouville積分を用いた拡張KP階層について,前論文(J.of Phys.A35(2002)9652)では論じなかった,1/3階微分積分作用素がある場合の拡張KP階層を調べることも行った.
|