研究概要 |
これまで,自己双対ヤン・ミルズ場のADHM構成法を区間I_q:={±1/2,±q/2,±q^2/2,…}(qはパラメータ)上で考察する際に派生的に導かれたq-離散Nahm方程式D_qT_j(z)=(1/2)ε_{jkl}(T_k(qz) T_l(z)-T_l(qz) T_k(z)), j,k,l=1,2,3の可積分性を調べてきた.D_qはq差分演算子である.特に,Euler top型の簡約を行って得られるq-差分方程式が特異点閉じ込めテストを通過すること,また,Flaschka流の戸田型簡約を行って得られるq-差分方程式には保存量が少なくとも1つ存在することが確認され,報告された。 本年度は,可積分性の判定のもう一つの重要な指標である,代数的エントロピー(algebraic entropy)に着目した。これは系の複雑さを表す一つの指標として導入されたものである。特に,上記q-離散Nahm方程式に対して代数的エントロピーの予備的な計算を行い,その結果の一部を国際会議(The Fifth IMACS International Conference on Nonlinear Evolution Equations and Wave Phenomena: Computation and Theory, Athens,GA, University of Georgia, April 16-19,2007)で発表した。なお,代数的エントロピーの計算には多少の代数幾何学の知識と計算機による追試のための準備が必要であり,上記方程式に対して代数的エントロピーの厳密な計算を遂行することは残された問題となった。
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