本年度は、外部磁場を制御し原子スピンを操作する事で、凝縮体の波動関数に幾何学的位相を付加し量子渦を生成する事に成功した。また、量子渦があるBECを全光学的方法で短時間ながら捕獲(光トラップ)する事に成功した。具体的な方法や成果の詳細を以下に記す。 1 前年度に開発した高精度・高速電流制御回路を用い、磁気トラップ中に生成したBECに加えられているバイアス磁場の方向を反転させる事で量子渦を生成した。バイアス磁場の値は0.5Gから-0.5Gに変化させた。磁場の反転時間は1ms〜10msの間で変えていき、5msの時最も良い渦生成の再現性が得られる事が分かった。量子渦がBEC中に生成されてから渦が観測されなくなるまでの時間は約10msであった。これは、磁場反転により磁気トラップの形状が変化し、BECが膨張するために渦が消滅してしまうからだと考えられる。BECの膨張の度合いを観測するために、直交する2方向からの同時撮像を行った。磁場反転後、10ms程度経過すると2倍程度原子集団が拡散していく事が分かった。 2 BECの膨張(拡散)を抑制するため及び、渦のあるスピノールBECの研究をする事を考慮し、渦を生成したあとのBECを光トラップに再捕獲する実験を試みた。光トラップとして、直交させた2本のレーザーを用いる交差型を採用した。光トラップの立ち上げ時間やトラップポテンシャル深度を最適化したところ、光トラップされたBEC中の渦4msと短時間ながら全光学的に渦のあるBECの捕獲に成功する事ができた。
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