研究概要 |
1.Cs用磁気光学トラップの製作 新たに導入した防振台上に、Cs原子の磁気光学トラップ用の光学系と真空系を製作した。従来から使用していた半導体レーザーの出力が著しく低下していたため、新たなレーザー光源を導入して冷却効率の向上を図っているところである。また、薄いセル内の原子の電磁誘起透明化現象を利用した新しい高分解能分光法を開発した。これは、冷却レーザーの周波数安定化に応用できる。 2.光トラップ中の微粒子の運動 原子の光トラップの予備実験として、数ミクロンの微粒子を空中に捕獲する光トラップを製作した。水滴、それが結晶化したダイヤモンドダストを空間捕捉し、トラップ中でのそれぞれの運動状態を散乱光の空間・時間パターンから解析した。 3.アトムチップ上の原子の運動解析 アトムチップの1つである磁気誘導路内の原子の運動を、シミュレーションにより解析した。周期的に磁化した磁気テープによる磁場に定常横磁場を印加すると、テープの上空には零磁場になる点が周期的に並び、ここにlow-field seeking状態の原子がトラップされる。横磁場に時間的な変調を加えたところ、原子の運動がカオスになることが見いだされた。カオスは、変調周波数が固有振動の周波数の整数倍に一致したときに誘起されやすい。磁気誘導路が量子カオスの研究舞台となることを示唆する成果である。 4.メゾコピック(ナノスケール)系での量子輸送過程 Baker写像結合系,スピン結合系の両者での古典・量子対応を数値的に比較検討した.これに関連して時間について非整数階微分(Caputo微分)の多自由度非線形方程式で,はじめて差分による数値解法を作ることが出来た.
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