研究概要 |
前年度の研究の発展として、これまで測定していない幾つかの気体アモルファスクラスレート水和物の中性子散乱実験を行った。ゲスト分子としてはCD_4とArを選択した。構造緩和による変化を見るため,50K,120K,150K,180Kでアニーリングを行った後に測定した。中性子散乱実験は高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の中性子散乱実験施設(KENS)において行った。まず,非弾性散乱実験(LAM-D分光器を使用)を行い,試料の振動状態密度を調べた。次に,中性子回折実験(HIT分光器を使用)から,ゲスト分子と酸素原子または重水素原子の2体相関を見ることによって,ゲスト分子の周りのケージ構造の形成度を調べた。これらの結果から、ゲスト量を増やすことおよびゲストサイズを大きくするにより、疎水性水和効果を通じてケージ状構造の形成および水素結合構造の強化が起こること、これに伴って低エネルギー励起強度が減少することが分かった。また、ゲストサイズが大きいほど、高温でアニールした際に、氷ではなく水和物結晶になり易いことが分かった。 本年度の1-2月に、これまで国内で使用していた蒸着試料用クライオスタットを英国のRutherford Appleton研究所に持ち込み、MARI分光器による中性子可干渉性非弾性散乱の測定を行った。試料はアモルファス氷とアモルファスXe水和物とした。まだ、解析段階であるが、両試料にフォノン分散的な励起が観測され、アモルファス状態においても、擬似的なブリルアンゾーンが存在することが明らかになった。
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