研究概要 |
本研究の目的は、ホタルの生物発光反応初期過程で見出しうる短寿命中間体を検出するための実験系を開発し、"化学エネルギーへの高効率変換機構"の特徴を分光学的に解明することである。17年度は本プロジェクトの中間年度であり、前年度の問題点を解明し短寿命中間体を検出するための装置の改良を図った。したがって、当初計画した基質分子ルシフェリン(Ln)アナログの合成は中間年度では本格化せず、装置の改良に努めた。すなわち、生物発光強度の時間変化と発光スペクトルとを測定できるように試料ホルダーに2台の光検出器を装着し、スイッチを切り替えて使えるようにした。また、ディレー回路を測定系に導入し360nmのパルス光をサンプルに照射後、ミリ秒の時間遅れを発生させて生物発光と蛍光とを分離観測できるようにした。 ◎検討課題とその結果 短寿命、低濃度の中間体を分光学的に検出するためには瞬時に同時的に多数のケージドATP(CATP)を光分解してATPを生成する必要がある。しかし、CATPのATPへの分解速度は〜ミリ秒であり、水溶液中反応の律速段階は拡散過程と考えられるので、基質単一酵素1分子反応による発光スペクトルの重ね合せとして観測される総発光強度の減衰曲線は不可避的に時間的巾を持つ。そこで、酵素ルシフェラーゼ濃度[E]を10^<-7>Mに固定して、[Ln],[ATP],および[Mg^<2+>]を変化させて減衰曲線の巾をできる限り狭くするよう各濃度の最適値を得た。さらに、パルス光(強度〜mJ/cm^2)照射でCATPの50%からATPが生成されると仮定し、CATPの最適濃度を決定して同様に減衰曲線の時間巾が狭くなるように[Ln],[Mg^<2+>]を決め直した。次に、各サンプルをHEPES(PH7.8)中に暗室下で混合し1パルスレーザー照射して発光強度の時間変化と発光スペクトルとをディレー回路を通して観測したが、生物発光の信号を観測できなかった。今のところ原因は不明であるが、幾つかの新たな問題点が明らかとなったので次年度の課題として取り組む計画である。
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