研究概要 |
Src SH3はβ-シートからなる蛋白質である。我々はこのSH3が巻き戻るとき,主にαヘリックスからなる中間体を取ることを見出した。この中間体に含まれるα-ヘリックスの割合は,温度,pHによらずほぼ一定であった。Src由来のSH3だけでなく,fyn SH3も同様であった。この結果は,いままでのβラクトグロブリンや,ユビキチンの結果とあわせて考えると,「主にβ-シートからなる蛋白質も,主にα-ヘリックスからなる蛋白質も,その初期過程には,α-ヘリックスからなるフォールディングコアを取る」とまとめることができる。この結果を,2次構造予測の種々のプログラムで計算された結果と比べてみると,Baldwinらが開発したヘリックス2というプログラムから予測した結果と,良い一致を示すことが分かった。このことは,次のような仮説でまとめることができる。「蛋白質のフォールディング初期過程では,ポリペプチドは,速いヘリックスコイル転移を繰り返している。偶々α-ヘリックスが互いにぶつかったとき,より準安定なフォールディングコアを形成する。このコアに含まれるα-ヘリックスは,主にα-ヘリックスからなる蛋白質の場合には,nativeな条件で安定に存在するものの一部になり,主にβ-シートからなる蛋白質の場合には,フォールディングコアとしては存在するが,その後,より安定なβ構造に変化していく」。 この仮説をさらに多くの蛋白質で検証するために,SS橋を含むRnase A,リゾチームを,SSを還元した状態から出発してフォールドさせた。その結果,酸化型,還元型のどちらの場合にもフォールディング初期に現れるα-ヘリックスバーストの大きさは同じで,ヘリックス2から予測される割合によく合致することが分かった。
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