研究概要 |
蛋白質は特定の道筋を通ってフォールドする(Levinthalのparadox)。したがってフォールディング研究の第一の目的は,その道筋を明らかにすることである。我々はクライオストップトフロー法によりX線溶液散乱,円偏光二色性,蛍光をプローブとして用いて,蛋白質の2次構造,コンパクト化の時間的経過を直接測定する方法を開発してきた。それを用いて,現在までに主にαへリックスからなる蛋白質(アポミオグロビン,lambda repressor)のαへリックス形成速度を測定すべく試みてきたが,これは我々の現在の方法では測定できないほど速い。一方,β構造を主として持つ蛋白質の揚合には,β構造が形成される前にαへリックスの形成が観測される蛋白質が見つかってきた。我々はこれがかなり一般的な現象であると考えはじめている。もしそうなら,これは従来の蛋白質フォーイレディングの主描像を書き換えることになる。本研究では,最もαへリックスができそうにない蛋白質であるSH3ドメインを用いて,フォールディング中間体の研究を行ってきた。 その結果, src SH3,fyn SH3の両者の場合とも,αへリックスを多く含む初期フォールディング中間体が形成されることがわかった。 さらに多くの蛋白質を検証した結果,この初期中間体に含まれるαへリックスの含量は,へリックスコイル転移の理論に基づいて予測されるへリックス含量と良く線形の関係を満たすことがわかった。 src SH3の45番目のAlanineをGlycineに置き換えた置換体(A45G)は中性では,野生株と同じ構造を示すが,pHが酸性側でフォールディング初期中間体と同じαへリックスの多い構造を取ることが判った。
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