マントルの熱・化学的状態やマントル対流の様式は、リソスフェアの属するレジームに強く依存する。筆者は、これまでの研究により、リソスフェアのレジームには、「弱いプレートのレジーム」、「強いプレートのレジーム」「スタグナントなプレートのレジーム」の三つがあること、及び、地球のリソスフェアは「強いプレートのレジーム」に属することを示してきた。今回、それぞれのレジームで、マントル対流と火成活動の結果、マントルにおいてどのような熱・化学的状態が実現されるかを、数値シミュレーションによりシステマティックに調べた。その結果、「強いプレート」のレジームに属するリソスフェアのもとでは、マントルには以下の特徴が現れることが明らかになった。 (1)初期地球に見られるような放射性元素の崩壊による内部加熱が十分強い時、活発な海嶺火山活動のため、マントルは化学的に成層し、下部マントル深部に、沈み込んだ海洋地殻が集積してできた、高温のスーパープルームが発達する。さらに、スーパープルームからしばしば、高温のプルームが成長し、ホットスポットの火成活動を引き起こす。プレート運動は定常的に起こり、マントルの熱・化学的状態も定常状態に落ち着く。 (2)地球の歴史が進み、内部熱源が弱くなるにつれて、プルームの生成がより間欠的になり、プルームの温度も低下する。これにつれて、プレートテクトニクスもより間欠的になり、マントルの熱・化学的状態は時間とともに大きく揺らぐようになる。 以上の結果は、太古代から現在に至るまでの地球のテクトニックな進化や、現在のマントルの構造をよく説明するものである。さらに、「弱いプレートのレジーム」や「スタグナントなプレートのレジーム」ではスーパープルームは発達しないことも確認した。
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