研究概要 |
海溝付近で起こる地震の予測・予知のためには、繰り返し地震を発生している領域であるアスペリティを明らかにする必要がある。精度のよくアスペリティを明らかにするためには、震源域近傍での記録が必要である。海溝付近で起こる地震を近傍で観測するには、海底地震計が必要であるが、従来の自己浮上式海底地震計は高感度観測のために設計されており、大きな地震の際には記録が飽和してしまい、アスペリティ(震源過程)の研究には不向きである。大きな地震の記録を飽和せずに収録するには加速度計が適しているが、主に電力の問題から自己浮上式海底地震計ではあまり使用されていなかった。一方、自己浮上式海底地震計は耐圧容器にチタン製球容器を使用することになり、内蔵可能な電池容量が格段に大きくできるようになった。本研究は、海溝付近で起こる地震のアスペリティ解明(震源過程研究)のために、1G程度までの加速度でも飽和しない記録を得る海底強震計を開発することが目標である。平成16年度は,現在の長期観測型海底地震計に小型の加速度計とそのデータ収録システムを付加する試作型を作成した。さらにスマトラ・アンダマン地震の海底余震観測において、この試作型を震源域に設置し実海域での観測を行った。平成17年度はこの海底強震計を回収し、規模の大きな余震の飽和しない記録を得ることができた。得られた記録の評価により、後続波であるS波で飽和することがないために震源決定に有効なだけではなく、震源過程の研究にも有用であることがわかった。今後の課題は、より高品質の加速度記録を得るためにセンサーの再選択などシステムの改良を行うと共に、さらに長期の観測を行えるようにすることであり、海溝付近で発生する大地震の震源過程の研究に資することをめざしている。
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