研究概要 |
気象庁精密地震観測室(長野県松代)の100m石英管伸縮計は,原理的には非常に高い分解能を有しているのだが,さまざまな観測ノイズのためにその能力を必ずしも生かしきれていないのが実情である.一つの大きなノイズ源は,気圧変化によってトンネル内の空気の温度が変化し,それによって生じた材質の熱膨張(収縮)が,見かけ上の地面の伸び縮みを発生させるという効果である. このノイズへの対策として,坑内の温度変化と,その原因となる気圧変化とを,精密にモニターするプロジェクトを2003年より展開してきた.試験観測の期間をへて,今年度から本観測に入り,トンネル内数カ所において気圧および温度の連続観測を行っている. これまでの解析でわかったことは,気圧変化と温度変化とは単純な比例関係にあるわけではなく,複雑な周波数依存性を示すということである.これは,トンネルの壁などへの熱伝導を通して温度変化が緩衝されるためであると考えられる.つまり,短周期においては気圧と温度はほぼ比例するが,長周期においては熱が壁を通して逃げてしまうために,温度変化は小さくなる.また,石英管を覆っている発泡スチロールのカバーは,これまで単に外部の温度変化を内部に伝えない役目を果たしていると考えられてきたが,理論的な考察および試験的な測定により,系の熱容量を増大させて温度変化を抑制するという効果のほうがむしろ重要であることがわかった.以上のような効果をモデリングするために,熱伝導の効果を含めた数値モデルを開発し,実際の観測データとの比較を行っている.
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